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おばちゃん探偵、法科大学院に学ぶ。

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Date:2005.01.05(Wed)16:30 | Category:[未分類]

秘密のあっこちゃん調査ファイル:風にふかれるストレートヘア (3)

 これは1994年に出版された、佐藤あつ子著「初恋の人、探します」(遊タイム出版)に収録されたエピソードより抜粋したものです。なお、登場人物は全て仮名で、ご本人の許可を得ております。

 三学期の授業が始まって一週間たっても、千里は学校に姿を現さなかった。

 その日の放課後、遠山良美が三年のクラスにやってきた。帰ろうとして廊下に出た和宏は、良美が何か言いたげに立っているのを見つけたが、同級生が一緒だった手前、

「オッス!」

 と声をかけただけでそのまま帰った。

 翌日、和宏は良美を呼び出した。

「昨日、何か話があったんと違うんか?」

「うん、千里のことや」

「あいつ、二、三ヶ月、会われへんと言うとった」

「もうすぐ、施設に行くらしいねん。千里、そのことを自分で柏本さんに言うの、いややったみたい。半年したら戻ってくるから、待っていてほしいと伝えてくれって…」

 そうか、そういうことだったのか。家庭の事情が複雑であるということは千里から少し聞いていた。同級生である千里の兄も三学期からは学校へ来ていなかった。担任の教師は「高木は当分長欠になる」とだけしか言わない。

 半年ぐらいなら待てる。その時そう思った。



 公園のブランコの横に三本並んで立っている桜の木からは、クマゼミの「シャァー、シャァー、シャァー」という声がうるさいくらいに聞こえていた。夏休み最初の日、和宏は千里の家に向かって自転車を走らせていた。

 和宏は高校一年生になっていた。

 あれから半年以上たったが、千里は戻ってこなかった。連絡もまるでない。通学途中、たまに会う遠山良美に聞いてもみたが、千里の消息はわからなかった。

 昨日、和宏は大切にしていた縁結びのお守りを失くした。去年のクリスマスに千里がくれたお守りだった。和宏は、あれ以来、それをずっと制服の内ポケットに入れて持ち歩いていた。その大切なお守りが昨日、制服をクリーニングに出そうとして失くなっているのに気づいた。慌てて部屋中探し回ったが、出てこない。母親に当たり散らし、逆にしかられた。

 ショックだった。それは千里との思い出の唯一の品だった。そのお守りを失くしたことで、千里とのつながりが途切れてしまったように思えた。

 居ても立ってもいられなくなり、千里の家へ自転車を走らせた。

 千里の家は静まり返っていた。その家は二軒長屋の古い借家で、ガスメーターには大阪ガスの紙札がついたままだった。

「やっぱり空家のままだ」

 春の初め、和宏が高校に合格した時にも訪ねていたので、空き家であることはわかっていた。けれど「ひょっとしたら」という思いだけで自転車を走らせていたのだ。わずかな期待はむなしく破られた。

 ゴミを捨てにきた隣のおばさんが、空家の前で突っ立っている和宏をジロリと睨んでいく。手の甲で額の汗をぬぐうと、自転車にまたがってもと来た道を引き返した。

 その夜、和宏は和歌山へ電話を入れた。正月の苦い経験が、これまで祖母宅への電話を躊躇させていたが、もうそんなことは言っていられない。

 和宏が千里の友人だと名乗ると、祖母の言葉つきが急に変わった。

「あんた、どこの友達?中学の?千里に何の用事?連絡取りたいってゆうても、今、千里は連絡取れへんよ!」

 取り付くシマがない。

 翌日、和宏は家庭裁判所に電話した。

 案の定、和宏の身元や千里との関係を根掘り葉掘り尋ねられた上に、やっと返ってきた答えは

「資料が多すぎて調べることができません」

だった。

「そこを何とか」と食いさがる和宏。電話は別のところに回されて、一から身元や千里との関係を聞かれる。さんざんたらい回しにされたあげくに返ってきた返事が、

「リストには高木千里という名前はありませんねぇ…」

 そんなはずはない!もう一度調べてくれと訴える和宏に、

「高木千里さんは、今は社会福祉施設にいません!」

 と言っただけで、その電話は切れた。もう自力で千里を探す方法はわからない。

 二学期も終わろうとしていた。千里と別れてもうすぐ一年になる。

 和宏はあの夏の日以来、千里を探してくれるところを探していた。

 ある日、阪神ファンの同級生が持っていたスポーツ紙を何気なく見ていた和宏は、片隅の広告に目が釘付けになった。

『初恋の人探します。-着手金3万円。成功報酬3万5千円』

 ここや!

 和宏は次の日には寿司屋でアルバイトを始めていた。


  ~ 続く~
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プロフィール

佐藤あつ子

Name:佐藤あつ子
大阪府出身。奈良教育大学を卒業後、自らの「思い出の人を探したい。しかし、あまりにも料金が高すぎる」という経験から、従来のイメージを払拭した調査業者を目指し、昭和63年10月「初恋の人探します社」を創業。思い出の人探し(所在調査)をはじめ、家系図調査、企業調査など、長年培ったノウハウを元にした独自の調査方法で、判明率は90%以上を誇る。
また執筆活動においても大阪新聞に連載された「秘密のあつ子ちゃん 美人探偵・調査ファイル」のエピソードをまとめた「初恋の人、探します」(遊タイム出版)が、日本リスクマネジメント学会第3回RM文学賞を受賞。平成10年には松竹新喜劇において、同書を原作にした舞台「初恋の人探します社」(渋谷天外脚本)が上演された。
その他にも、ラジオ・テレビ出演、雑誌寄稿、起業家への創業支援や大学でのアントレプレナー養成などでの講演など、各分野において精力的に活動している。

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