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おばちゃん探偵、法科大学院に学ぶ。

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Date:2018.06.08(Fri)13:10 | Category:[未分類]

秘密のあっ子ちゃん(41)

 これは平成6年より大阪新聞紙上にて連載していた「秘密のあっ子ちゃん」に掲載されたエピソードより抜粋したものです。なお、登場人物は全て仮名で、ご本人の許可を得ております。

そんな時、彼(21才)が彼女に声をかけてくれました。
 「どうしたの?このごろ元気がないみたいだけど」 「友達がサークルを退めてしまって淋しいんです。彼女と私は共通するところがありましたから…」
 彼女はそう答えました。 「僕じゃだめ?」
 驚くべきことに彼はそう言ってくれました。
 しかし、彼女は素直な反応ができませんでした。これまでの苦い経験からくる、悲しい自己防衛心が出てしまったのです。
 「僕じゃだめ?」
 彼(21才)がそう言った時、彼女(19才)は慌てて、「いえ、先輩には分らないことですから」そう答えてしまいました。
 「いじめられた」という辛い経験からとはいえ、未だに対人恐怖症を引きずっている自分への自己嫌悪と、他人の好意を素直に受け止められない、というより自分が傷つくことを極度に恐れてしまう臆病さが情けなく、彼女はますます落ち込んでしまいました。
 そんな時に、拙著「初恋の人探します」を読んだのだそうです。
 彼女は、その中に登場してくる依頼人のそれぞれの想いの強さに衝撃を受けたと言います。そして後悔ばかりしていないで、意を決して自分の想いを伝えたいと思うようになりました。 もちろん、彼に直接会って、自らの口で伝えるのがベストだということは、彼女自身も分っているようでしたが、いくら「意を決した」と言っても、そこまでの勇気は持てなかったようです。手紙を送れる住所を知りたいというのが彼女の希望でした。しかも、「サークルの仲間には誰一人知られないように」という条件つきで…。 
 調査といっても、彼女(19才)の依頼は、これまでの多くのケースと比べれば、さほど難しいことではありませんでした。いくら「サークル仲間には知られないように」という条件がついても、在学中の彼(21才)の住所を割り出すことは易すいことでした。 彼の現住所はすぐに分ってきました。彼は、田舎から出て、東京で働いているお兄さんと一緒にマンション暮らしをしていました。大学へはそこから通っていたのです。
 彼女は清水の舞台から飛び降りるつもりで、生まれて初めての勇気を振り絞って、彼への手紙を書きました。後に、「思うように気持ちのままは書けなかった」と言っていましたが…。
 三日後、彼から電話が入りました。
 「一度、ゆっくり話そう」ということだったらしいのです。
 私はその後、二人がどういうデートをしたのかは知りません。しかし、これをきっかけに、彼女の対人恐怖症が少しでもましになって、彼女の足かせとなっている「いじめに会った」といういやな記憶が少しでも薄らげばいいなぁと思っています。

<終>

Date:2018.06.01(Fri)16:13 | Category:[未分類]

秘密のあっ子ちゃん(40)

 これは平成6年より大阪新聞紙上にて連載していた「秘密のあっ子ちゃん」に掲載されたエピソードより抜粋したものです。なお、登場人物は全て仮名で、ご本人の許可を得ております。

 彼女は十九才。文学部二年の女子大生です。
 彼女は入学間もなく、大学のあるボランティアサークルに入りました。そこで二年先輩の彼と出会いました。 
 彼女の依頼というのはその先輩の住所を知りたいというものでした。
 同じ大学で、今は退めているとはいえ、同じサークルの、しかも在学中の先輩なのですから、何も調査会社に依頼しなくても調べる手だては山ほどありそうなものです。当社に依頼してきたのには彼女なりの深い訳があります。
 彼女はもともと内気で少し引っ込み思案の少女でした。(その傾向は今も大いに残っていると私は思いましたが…)それが災いして、彼女は中学三年生の時に徹底したいじめに会いました。 いじめられた心の傷はなかなか癒すことができず、彼女は対人関係においてますます臆病になり、高校に入ると登校拒否が激しなって、その不登校が元で学校を中退したのでした。 
 もともと成績の良かった彼女でしたので、その後、通信教育で大学受験資格を得て、晴れて四年制大学へ入学しました。しかし、大学へ入っても対人恐怖症からはなかなか脱することはできませんでした。 
 大学に入学すると間もなく、彼女はあるボランティアサークルに参加しました。 そこで、二年先輩の彼と出会うのです。彼は背が高く、野外活動で日焼けした浅黒い肌が印象的な逞しい青年です。キャンプでは小学生達の気をそらせない上手な指導をしますし、老人ホームでは車椅子のおばあさんをとても優しく世話します。
 彼女はすぐに彼のことが好きになりました。
 ところが、彼女は過去にいじめのターゲットとなったいやな思い出をまだ引きずっていて、「対人恐怖症である自分が人を好きになるなんておかしい」と思い込んでいたのです。彼女は彼を諦めようとしてました。 私は、この時点で私が彼女のことを知っていたら、もっと力になってあげれたものを、と思ったものです。可愛らしくて危なげなこの恋は、今の彼女にとって、ただ後悔だけしか残していません。この恋が成就すれば、彼女の対人恐怖症も逆に少しはましになったはずなのですから…
 夏休みを前に、彼女がより一層心細くなる出来事が起こりました。それは彼女の唯一というべき友人がサークルを退めてしまったことです。
 彼女(19才)の数少ない友人、彼女にとっては「親友」とも言うべき同級生もまたそのボランティアサークルに所属していました。その友人も性格的に彼女と似たところがあり、対人関係が苦手でした。二人はよく自分達の悩みを話し合い、慰めあって、お互い横にいてくれさえすれば安心できました。そのため、二人は常に行動を共にするという仲でした。
 ところが、その友人が別のチームの先輩に厳しい言辞を浴びせかけられ、それを苦にして退めてしまったのです。 
 彼女は一人になりました。一人でいると不安が募り、ますます自分の思うことが表現できなくなってしまいました。
 そんな時、彼(21才)が彼女に声をかけてくれました。

<続>

Date:2018.05.25(Fri)17:28 | Category:[未分類]

秘密のあっ子ちゃん(39)

 これは平成6年より大阪新聞紙上にて連載していた「秘密のあっ子ちゃん」に掲載されたエピソードより抜粋したものです。なお、登場人物は全て仮名で、ご本人の許可を得ております。

 とにもかくにも、彼は日を置かず、当社に連絡をくれました。
待っていた彼(64才)からの連絡は三日も経たないうちに入ってきました。 私が彼に、依頼人(60才)が探していること、元気かどうか気にされていることなど、これまでの経過を説明すると、彼自身も随分と懐しがられ、彼女が自分を探してくれたことを大層喜ばれたのでした。
「いやぁ、四十年も前のことをよく覚えてくれていました。有難いことです。彼女も元気にされているんですか?そうですか、幸せにお暮らしなんですね?私の方は十年前に退職しまして、今は隠居の身ですわ。ちょっと心臓を患いましたが、もう大丈夫です。彼女にはこちらから連絡しますので、よろしくお伝え下さい」
 そういう返答でした。相変わらず、自分の連絡先は言わずじまいでした。
 それから二日後、依頼人から喜びの電話が入りました。
 「早速、昨日、彼から電話をもらいまして、もう懐しくて懐しくて、三十分も喋ってしまいました。」 これで、この件は一件落着したと私は思っていました。しかし、ひと月後、再び彼女から電話が入り、彼が何故なかなか自分の連絡先を言わなかったのかが分ったのでした。 
ひと月後、再び連絡をくれた依頼人(60才)は、何故彼(64才)が自分の連絡先を言いたがらなかったのかを説明してくれました。
 「あれから彼の方からちょくちょく電話をくれて、私の体を気づかってくれたり、昔話をしたりで、いい茶飲み友達ができたと喜こんでいたんですけれど…」
 彼女はそう切り出して、こんな話をしました。
 そもそも、彼の奥さんという人は若い頃から大層なやきもち焼きで、彼も少々閉口していたらしいのですが、近頃依頼人と仲良く電話で話をするものですから、嫉妬の癖が出て、「そんなに楽しいのなら、この家を出て、その幼なじみの所へ行かはったらよろしい!」ということになったのだそうです。
 彼女が言葉を尽して、今回は一応納得されたらしいのですが、「そちらへも奥さんから電話が入るかもしれませんので、ご迷惑がかかってはいけないと思いまして…」と、彼女はそう言うのです。 
 「いえ、いえ、迷惑なんかではありませんよ。ただ懐しいというお二人の気持ちを奥さんは誤解されていると思いますので、お電話があったら、こちらからもよく説明しておきましょう」 私はそう答えながら、これまで何千件というケースを扱ったけれど、四十年以上も前の話にやきもちを焼かれたのは初めてだと思ったものです。 


<終>

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プロフィール

佐藤あつ子

Name:佐藤あつ子
大阪府出身。奈良教育大学を卒業後、自らの「思い出の人を探したい。しかし、あまりにも料金が高すぎる」という経験から、従来のイメージを払拭した調査業者を目指し、昭和63年10月「初恋の人探します社」を創業。思い出の人探し(所在調査)をはじめ、家系図調査、企業調査など、長年培ったノウハウを元にした独自の調査方法で、判明率は90%以上を誇る。
また執筆活動においても大阪新聞に連載された「秘密のあつ子ちゃん 美人探偵・調査ファイル」のエピソードをまとめた「初恋の人、探します」(遊タイム出版)が、日本リスクマネジメント学会第3回RM文学賞を受賞。平成10年には松竹新喜劇において、同書を原作にした舞台「初恋の人探します社」(渋谷天外脚本)が上演された。
その他にも、ラジオ・テレビ出演、雑誌寄稿、起業家への創業支援や大学でのアントレプレナー養成などでの講演など、各分野において精力的に活動している。

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